大判例

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東京高等裁判所 昭和27年(ウ)231号 決定

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

(事実と判斷)相手方は抗告人を被告とし橫浜地方裁判所に対し請求異議の訴を提起し且その執行の停止命令を申請し、同裁判所は強制執行停止決定をした。抗告人は右決定を不当とし、即時抗告の申立をした。

民事訴訟法第五四七条の強制執行停止決定に対し不服申立ができるかどうかは争のあるところであるが、抗告審は積極説の立場をとり、審理の結果抗告人の抗告を理由なしとして棄却した。その理由において、右停止決定をなすに当つて留意すべき点を次のように述べている。「按ずるに、請求に関する債務者の異議の訴が提起されただけでは、当然には当該債務名義に基く執行の開始続行は妨げられない(民事訴訟法第五四七條第一項)けだし執行力の排除は本訴認容の確定判決をまつてはじめて生じ、これに基き執行機関に執行停止を求めうるにすぎぬからである。(同法第五五〇条一號)しかし本訴提起にかかわらず執行が続行され、債務者の異議が理由あることが判明しても最早執行阻止の目的を達しがたくなるおそれがあるから、これを救済するために、法律は、異議のため主張したる事情が法律上理由ありと見え且事実上の点につき疏明ありたるときは受訴裁判所は申立により異議につき終局判決をなすまでの間執行について停止その他の暫定的処分を命ずる決定をなしうる旨規定したのである。(同法第五四七條第二項)このようにこの決定は仮の処分を命ずるもので、その性質上民事訴訟法第五〇〇条第三項を類推してこれに対しては不服申立をなしえぬとなす学説すらあり、旧大審院判例においては、即時抗告をなしうるもこの即時抗告には同法第四一八条の執行停止の効力はないとなされたのであつたが、(昭和十一年二月六日大審院決定民集一五卷二號一四七頁参照)受訴裁判所においてこれが裁判をなすに当つてもよくその目的趣旨を理解し、いやしくも主張事実につき一応の疏明があり且これが法律上異議を理由あらしむるに足ると認めるときはこれが裁判をなすべく、その主張事実が通常ありえない異常なものであること、又はその提出したる疎明が反対疎明に比して疎明力の弱いことの故を以て直ちにこれを却下することなく、かかる場合には申立人(債務者)に相当の保証を立てしむることによつて被申立人(債権者)の右裁判により被ることあるべき損害を担保せしむべきである。

今これを本件について見るに、相手方の本件異議の理由として主張した事情は、強制執行停止決定申請書によれば、(一)本件調停は、相手方が家族親族間の平穩無事を思いかつ抗告人の精神状のの鎮静をまつために真意にあらずしてこれに応じたものであつて、このことは、抗告人においてもよく了知していたところである。(二)しかも右調停成立後相手方から抗告人に対して右調停は真意でなくしかも抗告人の極端な暴行脅迫によるものであるからこれを取り消す旨話したところ抗告人も快く同意し今後兄である相手方を困らせる行為に出でないことを誓い右調停の無効であることを承認した。(三)仮りに右(一)(二)の事実が認められないとしても、右調停成立の時から十年を経過しその間経済事情は激変し、本件建物の価格も幾百倍に達し到底右調停条項に定むるが如き価格を以てしては双方ともこれを履行する意思を有しないことは、社会通念上明白であり、換言すれば、本件調停は事情の変更によりその効力を失つたものである。というにあつて、右事実を疎明するため疎第一ないし第四号証を提出したのであるが、右(三)の事実はしばらくおき(一)(二)の事実は必ずしも絶対にあり得ない事実ではなく、もしありとすれば優に異議の理由となしうる事情であつて、又、疎第一号証第四号証によれば、これが疎明なしということもできないので、原審がその裁量に基き申立人(相手方)に金十万円の保証を立てしめ本件強制執行停止決定をなしたのは相当であつて抗告人の抗告理由は、前示民事訴訟法第五四七条第二項の立法趣旨並びに同条項所定の決定の性質を理解せざるに出でたものであつて、所論はひつ竟相手方の異議が理由ありや否の終局的判断を停止その他の仮処分を命ずる決定手続においてなさしめんとするものに外ならない。」

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